優しくない同期の甘いささやき
熊野は照れていた。照れ隠しなのか、突然私の鼻をつまんだ。


「ちょっと、なにするのよ?」

「マジで、かわいいな」

「えっ、なに? こんな顔なんて、かわいくないでしょ?」

「うれしいと緩んだ顔をする美緒がかわいいって、言ってるの!」


熊野は頬を赤らめて、再び私を抱きしめた。


「あの、熊野?」

「もう俺と付き合えよ。めっちゃ、キスしたい……」


私の首辺りに顔をうずめた熊野から体温が伝わってくる。


「は? キ、キス?」

「うん、したい」

「えっ?」

「絶対、イヤか?」


私は戸惑って、熊野の肩に手を置いた。聞き方がずるい。

絶対かと訊かれたら、絶対と言えないもの……。


「絶対では……ないけど。でも、あの、付き合っていないのに、するのはどうかと思うよ?」


熊野はガバッと顔をあげて、至近距離で私を見据えた。


「だからー、付き合おうよ。いいだろ?」

「うん……んっ……」


答えると同時に、唇を塞がれる。

それが彼がしたいと言っていたキスだと、すぐに理解できた。
< 91 / 172 >

この作品をシェア

pagetop