優しくない同期の甘いささやき
少々強引な求め方だったけど、熊野らしくて嫌ではなかった。

熊野の唇はあたたかい。


「好きだよ」


一度離れて、また愛を伝える。私が頷くと、再度唇を重ねた。

一度目よりも長いキスで、熊野の熱い舌が私の咥内に滑りこんでくる。舌を絡められて、何も考えれなくなった。

ひたすらキスを受け入れていた。何度も角度を変えて、繰り返す濃厚なキスに体の力が抜けていく。

気付くとソファに寝転んでいて、熊野を見上げていた。

彼は熱のこもった瞳で、私を見つめる。


「いいか?」

「えっ?」


何をいいかと訊いたの?

カットソーの裾から熊野の手が入ろうとする。

私はその手を掴んだ。


「抱きたい」

「ちょっと、待って……」

「待てない」

「でも、待って!」


大きな声を出して、熊野の動きを止めた。彼は不機嫌そうな表情で私を見下ろしていた。


「何でだよ?」

「だって、いきなりすぎる。さすがにこれ以上は……心臓が壊れちゃう。ずっとドキドキしてるの」


熊野は天井に視線を向けて、自分の額に手の甲を当てた。


「わかった……我慢する」
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