優しくない同期の甘いささやき
伏せていた熊野の目がまた私を捉える。目力が強いから、見つめられるたびに私の胸はドキッと揺れていた。


「美緒から俺にキスして」

「は? 私が熊野にキス?」

「そう。美緒からキスしてくれるほど好きになってくれたら、抱いてもいいだろ?」

「まあ……そのくらい好きになれば……」


熊野は「決定だ」と手を叩いた。

私からキスをするとは、なんともハードルが高いように思う。

今まで付き合った人はひとりしかいないが、自分からキスをしたことはない。

ちゃんと好きだったけど、積極的に動けなかった。

熊野はスッキリしたかのように、立ち上がって伸びをした。


「話がだいぶそれちゃったけど、お姉さんに今日のこと言うの?」

「悩む。でも、健人さんから伝わるかもしれないよね? 私が知っていて、言わなかったと分かったら……嫌な思いするかもだし」


姉の気持ちを第一に考えたいけど、どうするのがいいのか……。

熊野は、また私の隣に腰を下ろした。
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