優しくない同期の甘いささやき
姉は今も好きなのかもしれない。憎いと思うことで、気持ちを整理しようとしているようだ。

結婚するほど好きだった人で、幸せな生活を送っていた。それが崩れるなんて、悪夢だろう……。


「お姉ちゃん、私にできることがあったら何でも言ってね」

「うん……」


姉が涙を拭っていると、玄関の鍵を解錠する音が聴こえた。

「ただいまー」と母の明るい声がリビングにまで届く。


「あら? なに、ふたりして泣いているの?」

「ふたり?」


私も気付かないうちに涙が出ていた。慌てて、ティッシュペーパーで拭く。あとから入ってきた父も私たちを見て、驚いた。


「どうしたんだ?」


姉は「お父さん、お母さん」とふたりを呼んだ。


「私、離婚する」


突然の報告に父も母も呆然と立ち尽くした。

母が先にハッとして、声を発した。


「そう、わかったわ。じゃあ、また四人で暮らせるわね。ね、お父さん」

「ああ、そうだな。来月のお父さんの誕生日を祝ってもらおうかな」


父と母も姉の様子が変だったから、なんとなく察していたのかもしれない。
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