500文字恋愛小説
№20 こたつとみかん
こたつに潜った私の前にはみかん。
一つ取って皮を剥く。

「あーん」

せまってきた顔に苦笑い。
彼の口に無言で小分けにしたみかんを放り込む。

「自分で剥けばいいのに」

「……、面倒くさいもん」

……ああ、そうですか。

「あーん」

「はいはい」

こたつに手を突っ込んで、出そうともしない彼の代わりに、せっせとみかんを口に詰め込んでやる。
彼はなにが嬉しいのか、笑ってる。

「みかんとこたつって最高だよね」

「そりゃ、人に食べさせてもらえばね」

二つ食べさせると満足したのか、彼はこたつに突っ伏した。
私は冷えた手をこたつの中に突っ込んであっためる。

「手、冷えちゃったか。
ごめんね」

突然、こたつの中で手を握られ。
入っていられなくなるほど、熱くなった。
< 20 / 103 >

この作品をシェア

pagetop