500文字恋愛小説
№26 かなわない
先生に資料の整理の手伝いを頼まれた。
初めは他の子も一緒だったけど、部活とか塾とかで抜けていき、気が付いたら先生とふたりっきり。

「先生、これ……」

「ん?」

背中合わせに立っていた先生が振り返ると、思いの外、近かった。

……その吐息さえもかかってしまいそうなほど。

「ああ、わるい」

一歩、先生が、下がる。
私も一歩、前に詰める。
先生はさらに下がろうとしたけれど、背中は棚にふれている。

「おま、なにやって……」

先生の肩に手をのせ、つま先立ちになり顔を近づける。
じっと見つめる、先生の綺麗な瞳。
私はゆっくりと目を閉じると先生に……キス、できなかった。

「百年早いつーの」

苦笑混じりの声に驚いて涙目で顔を上げると、にやりと笑った先生の唇が私のおでこに……ふれた。
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