500文字恋愛小説
№30 クレープ
……クレープは苦手だ。
いや、好き、好きだよ?
けど、食べるのが苦手。
囓るたびにクリームが飛び出してきて。
ほんと苦手で、友達にいつも笑われる。
だから、彼と食べにいくのは避けてたのに。
なのに、さ。

「駅前においしいクレープ屋ができたってさ。
おまえ、そういうの好きだろ」

って。
これはもう、避けられないというわけできたのだけど。

「うっ」

案の定、囓ったらクリームは飛び出てきた。
慌てて出てきたところを囓ると、今度は反対側から出てくる。
泣きそうになりながら、クレープと格闘した。
一緒にいる、彼のことなんてかまってられない。
どうにかこうにか食べ終わると、彼が吹き出した。

「おまえほんと、もの食うの苦手だよなー」

「ううーっ」

「ちょっと待てよ」

彼の顔が近づいていて……私の口端についたクリームをなめ取った。
一気に顔が熱くなる。
にやりと笑う彼に、やっぱり彼とクレープを食べに来るのはよそう、そう思ってた。
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