500文字恋愛小説
№34 温泉
今日は彼と温泉にきたわけですが。
……揉めてます。

「家族風呂だろ、やっぱり」

「いやいやいやいや。
別々でしょ」

「なんで?
せっかく家族風呂があるんだぞ?
いまさら恥ずかしがるような仲でもないし」

「恥ずかしいもんは恥ずかしい!」

周囲は完全に、バカップルだと遠目でみてる。
確かに、こんなところで、こんなことで言い争ってるなんて、恥ずかしい。

「じゃあ言いますけど。
……俺、風呂ん中は流石に、眼鏡かけてないんだけど」

レンズの向こうの、切れ長の目に睨まれてたじろんだ。

「ド近眼の俺に、眼鏡を外した状態でなにが見えると?」

「ううっ。
……でも、恥ずかしいもん」

「そんなに恥ずかしがったらおまえ、……俺、湯船を鼻血で真っ赤に染めちゃうよ?」

赤くなった彼の唇が私にふれる。
結局、まわりの目に耐えられなくて家族風呂にしてしまったけど……もしかして、彼の思惑通り? 
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