500文字恋愛小説
№36 予約
「これ。
このあいだの礼」

「あ、いえ!
よかったのに」

差し出されたお菓子の小袋を遠慮しながら受け取る。
……このあいだ、彼のスーツのボタンが取れてつけてあげたお礼、だ。

「いや、ほんと助かったし。
俺、裁縫とかほんと苦手で。
ボタンすらつけられないぞ」

「いえいえ。
あれくらいなら、いつもで」

「ふーん」

彼の手が伸びてきたと思ったら、なぜか受け取った袋を奪い返された。
ごそごそとなにかしてると思ったら、ついてたお花を外してる。
そして私の左手を取ったかと思ったら……薬指に、お花を巻き付けられた。

「はい、これで予約ね」

「……ボタン付けの、デスカ?」

「はぁ?
……プロポーズのに決まってんだろ」

耳元で囁かれた声に、ボンと音を立ててあたまが爆発した。
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