500文字恋愛小説
№42 あのな?
「ああもう、あの課長、腹立つー!!!」

「……」

怒りながらごはんを食べてる私に、彼は無言。
まあそうだろう。
下手なことを言ってとばっちりを食うのは嫌だろうし。
触らぬ神に祟りなしって感じだ。
いつもはダイエットとか気にしてるけど、今日は憂さ晴らしとばかりに思いっきり飲んで、食べて、愚痴る。
苦笑いの彼には申し訳ないが。
案の定飲み過ぎて、彼にタクシーで送られる羽目になった。

「ほら、水飲んで」

「……うん」

家に着いて、汲んでくれた水を飲む。
心配そうな彼の顔。

「あのな?」

……あ、やばっ。
怒られる?

「泣いていいぞ」

不意に抱きしめられて驚いた。

「おまえがほんとは泣きたいの、知ってる。
ふたりのときくらい、甘えろ」

零れ落ちる涙に続いて嗚咽が漏れた。
彼はただ、ゆっくり髪を撫でててくれた。
< 42 / 103 >

この作品をシェア

pagetop