500文字恋愛小説
№5 残業
今日はクリスマスイブというヤツだけれど、私は残業。
そもそも、月末、年末が重なっているこの日に、定時で帰れるなんて思っているほうが間違っている。

「おわっ、たー!」

仕事が終わったのは、もう十時近かった。
本日、フリーの者の定めなので仕方ない。

「まだ残ってるヤツ、いるかー」

帰り支度をしていたら、今日は出張だった課長が戻ってきた。

「……って、お前だけか」

私の顔を見て彼が苦笑いを浮かべる。

「ケーキ買ってきたんだ、食べないか」

彼が証明するかのようにケーキの箱を上げた。
帰ってひとり虚しく過ごすより、ちょっとマシか。

コーヒーを淹れてきて、課長とふたり、ケーキをつつく。
しかし、課長はこんなことをしていて彼女とかいいんだろうか。

「きっとお前が残ってるだろって思ってた」

目の合った課長は照れくさそうに笑っているが、それってどういう意味ですか?
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