500文字恋愛小説
№51 影繋ぎ
バス停までの道を彼とふたりで歩く。

「明日、小テストだっけ?」

彼が唐突に口を開く。
思わず慌てて返事した。

「うん。
そう。
最悪」

「おまえ英語、苦手だもんな」

「こんど、教えてくれない?」

「いいよ」

また沈黙。
なにを話していいのかわからない。
彼とこうやって帰るようになってまだ一週間。
いまだに緊張してしまう。
思わず俯いた視線の先には彼の影。

……あ。

そうだ。
私はそっと、自分の手の影を彼の手の影に重ねてみた。

……影だったら、手、繋げるのに。

……はぁーっ、知らず知らずため息が落ちる。

「どうか、した?」

「ううん、なにも」

怪訝そうな彼に、不自然に上がっていた手を慌てて引っ込めようとした……けれど。

「……だめ、だった?」

足下には繋いだ手の影。
私は黙って首を横に振った。
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