500文字恋愛小説
№73 抱き枕
「ううっ。寒い……」
 
パソコンに向かって持って帰った仕事をしていた彼は、寒そうに肩を抱くと身体を震わせた。

「終わったの?」

「終わった。
終わったから寝よう」

「はーい」
 
読んでた本を置き、膝掛けを軽く畳む。
一緒にベッドに入ると、彼が後ろからぎゅーっと抱きついてきた。

「あったかい……」

「そう?」

「ああ。
いい匂いだし、適度にぷにぷにでさわり心地いいし、あったかいし、もう、サイコーの抱き枕」
 
私のあたまに彼は頬をすりすりしてる。
喜んでもらえるのはいいんだけど、困ったことがひとつだけ。

「もう、手!」

「えー、だって気持ちいいんだもん」
 
……結局彼にいたずらされて。
素直に眠りつくことができないのです。
< 73 / 103 >

この作品をシェア

pagetop