500文字恋愛小説
№94 目薬
……目薬。
嫌いです。
うまくさせません。

「……なにやってるんだ?」

「話し掛けないで」

「いや、手ー震えてるし、目、開いてないぞ?」

「だから話し掛けないでって!」
 
目薬さすのを諦めて彼を睨んだら、おかしそうに笑われた。

「そんなことにできないのかよ」

「苦手なものは苦手!」
 
私の手から彼が目薬を取り上げる。

「上見てみ?
……そう。
で、俺をじーっと見る」
 
言われた通りに彼をじーっと見上げる。
なんか、ちょっと笑ってるのに安心する。

「そのままずっと俺見てて。
ずーっと、ずーっと」
 
ひたすら彼の顔見てたら、その隙にちょんちょんってあっという間に目薬をさされてた。

「はい、よくできました」
 
チュッ、彼の唇がふれる。
驚いてまばたきしたら、いたずらっぽく笑われた。
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