8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
  *  *  *

 アイラの目を通して、一部始終を見ていたフィオナ一行も焦っていた。

『フィオナ、もしかして危なくない?』

 リーフェが言い、フィオナも頷く。

「どうやら、私が標的になってしまったようね。いったん後宮に戻りましょう」

 フィオナは近くにいた警備兵にカイを後宮に呼んでくるよう頼み、子供たちを抱きかかえて後宮へと戻った。
 走って戻ってきたフィオナに驚きを隠せないポリーとシンディにはなにがあっても戸を開けないように厳命し、そのまま部屋に立てこもることにした。

  *  *  *

 国王の執務室にいる人間の中で唯一聖獣の加護を得ているエリオットは、護衛の任務を忘れて駆け出したローランドを見てため息を吐く。
 王も宰相もうつろなまなざしで正面を見ている。ジャネットが髪を触るたびに、濃い香りが広がっていく。時間の経過とともに、皆まともな思考回路を奪われているようだ。

 エリオットは、国王に呼び出され、ここに入った時から、あまりに強い芳香が気になっていた。香りの広がり方も強さも、そして作用も普通とはあきらかに違うところを見れば、ジャネットは精霊にでも気に入られているのだろう。
 加護を与えても自分の意志は決して覆さない聖獣たちと違って、精霊は好んだ相手に対しては従順だと言われている。ことの是非は問わずに、相手が望むとおりに力を放出するのだ。

 精霊は才能のあるものが好きで、力を貸し与えることが多い。建築美術で有名なアンガスも、ブライト王国の研究者の間では、石の精霊に好かれていたのではないかと言われている。

(花の精霊あたりが、ジャネット様の味方をしているのだろうけど)

 ここで、ホワイティが作った薬をばらまけば、この洗脳じみた状況から脱することはできるが、エリオットはその前に聞いてみたいことがあった。

「ジャネット様」

 笑顔で話し出したエリオットを、ジャネットは不思議そうに眺める。

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