8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「あなたの香水は、人の神経を過敏にし、いらだちを増幅したうえで、ゆっくりと洗脳するものでよかったでしょうか」
「あなたには効かないのね? どうしてかしら」

 悪びれもせずに、ジャネットが微笑む。

「僕には、頼りになる素敵な友人がいましてね。あなたの計画を破綻にすることは可能です。でも、どうしてこんなことをなさるのですか? 僕にはあなたが、少しも楽しそうには見えないのですけど」

 同情めいた視線で見つめられ、ジャネットは動揺する。睨まれるのも、嫌われるのも覚悟して始めたことだ。捕まってもかまわない。けれど、この視線は違う。
 ジャネットはエリオットにかすかな恐怖を感じる。

「なぜ、同情するの……?」
「かわいそうだからですよ。貴方が」
「なんですって……?」

 なぜ、憐れまなければならないのか。怒っていいはずだ。彼にしてみれば、姉の立場を揺るがす女なのだから。

「あなたがオスニエル様に恋をしていないのはわかります。では必要なのは権力ですか? そうとも思えません。この香水が国中に浸透し、皆が苛立ちを抱え破壊的な行動をとったとしたら、あなたでも統治するのは難しいでしょう。であれば望みはなんですか? 戦争を起こしたいのですか?」
「あなた……」

 ジャネットは顔を引きつらせた。
 穏やかで優し気なエリオットに対し、侮りの気持ちがあったのも否定できない。まさか、こんなに鋭く真実をついてくるなんて。

「言っておきますが、ただの人間のあなたに、僕や姉上はやられることはありませんよ。僕らには聖獣の加護がありますから」
「聖獣……?」

 ジャネットがつぶやくとともに、金色の光をまといながらホワイティがやってくる。
 エリオットの腕に乗ると、いとおし気におでこをする寄せた。

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