8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 ローランドは目をそらす。そうだっただろうか。自分が守ってきた姫は、そんなに逞しかっただろうか。
 わからない。だってローランドは、フィオナが困る前にすべての災いの種を取り除いてきたのだ。

「俺たちが向かう前になにかあっても、あいつなりに必死に自分の身と子供たちを守るはずだ。だから俺たちは、最善の方法であいつを救い出さなければならない」
「そう……ですね」
「お前はエリオットのもとに戻れ。フィオナにとって大事な弟だろう。エリオットを人質に取られるほうがよっぽど悪いことになる。フィオナは俺に任せておけ」

 ローランドは、オスニエルをまじまじと見る。
 彼のことを、もっと傲慢で自分のことしか考えていないような暴君だと思っていた。けれど今、冷静に状況を把握しているのはオスニエルのほうだ。

「あなたは、フィオナ様を信頼しているのですね」
「……俺の妻だからな。愛しているし信じている」

 敗北感を覚えるのは、それがローランドにはできなかったことだからだ。ローランドは、フィオナが苦難に立ち向かうとは思っていなかった。ただ弱く、守らねばならない存在だと思い込んでいたのだ。

「わかりました。エリオット様の護衛に戻ります」
「頼むぞ」

 指示を出し、オスニエルは足を速めて後宮の方角へと向かう。
 ローランドはあきらめに似た気持ちで、今来た道を戻り始めた。

「……だからフィオナ様はあの男を選んだのか」

 彼の中には、ずっと小さな少女のままのフィオナがいた。その彼女が背中を向け、旅立っていく。ローランドはようやく、もう彼女が、ブライト王国の小さな姫ではないのだと納得できた。

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