8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
『じゃあ、いっくよー!』

 リーフェが風を起こし、ホワイティの薬を広めるとともに、まとわりついた香水の香りも払っていく。
 城中に広がるそれは、いきり立って熱くなっていた騎士団の頭も冷やしていった。

『お前たち、なにをしている!』

 そのタイミングで、どうやらオスニエルがやってきたようだ。

「オスニエル様、王命でフィオナ様を」
「騎士団が寄り集まってやることか? もう一度父上に確認してみろ」
「ですが』
「正しい判断をしろと言っているんだ。父上がフィオナを呼んだ理由はなんだ? 言ってみろ。必要ならばフィオナに自分から行かせる」
「それは……」

 騎士たちは目配せをし始めた。誰も、理由など知らないのだ。ただ──伝統から外れることへの嫌悪感が増幅したことによる、漠然とした怒りに突き動かされてきただけだ。

「……確認します」
「ああ。必要ならば文書を出せと言っておいてくれ」

 騎士団は一同踵を返し、戻っていく。カイはそれを見送って、ほっとしたように息を吐きだした。

「ありがとうございます。オスニエル様」
「よくやった。あの興奮状態で突入させていたら、誰かが怪我をしていたかもしれない」
「それにしても、なんでこんなことになっているのですか? みんな、フィオナ様のことをすごいと言っておられたじゃないですか」

 カイに効き目がなかったのは、最初からフィオナに対して嫌悪感がないからだろう。

「皇室の血統へのこだわりは、実は根深く残っているのだろうな」

 あきれたように鼻を鳴らし、オスニエルはそのまま警備するようにカイに言いつけ、中に入る。

「おとたま!」

 飛びついてくるのはアイラだ。

「怖かったか? アイラ。もう大丈夫だ」
「かーたまがいたから、平気。でもあのおねえさん」
「ジャネットのことか?」
「アイラ、お話ししたい」

 思いもよらないことを言われて、オスニエルが答えに窮していると、騎士団の伝令が来て、「フィオナ様をお呼びの件は、なにか行き違いがあったようです」と伝えてきた。
 どうやら国王も宰相も記憶が混乱しているらしい。

「あっちはなにかあったのかしら」

 頭を並べて考えていると、今度は別の女性使用人がやってくる。

「あの、ブライト王国のエリオット王子から伝言です。ジャネット様がお倒れになったので、様子を見に来てほしいと」
「エリオットから?」

 フィオナは驚いたが、アイラも行くと言い張ったため、全員で向かうこととなった。

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