8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「きみのせいじゃない、なかないでって」
「この人が、……言っているの?」
「うん。えっと、ずっと言ってた」
「ずっと?」

 ジャネットに見える夫は、悲しそうに微笑んでいた。

「ずっと、おねえさんのうしろにいたの」
「ずっと?」
「ちょっとおこってた。アイラ、こわくてちかよれなかったの。でも、いまは、だいじょうぶ」
「どうして?」
「アイラがこわくないようにしてくれたの。やさしいね」

 それは、ジャネットが覚えている夫の姿そのものだ。
 穏やかで、いつも笑顔で、小さな子供にはとりわけ優しかった。
 彼はきっと自分の子供が欲しいだろうと思っていた。なのに、ジャネットは全然妊娠できなくて。
 申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だから彼のためになることをしてあげたかったのに。

「……ユーイン様」

 結果として、彼を死なせる原因を作ったのはジャネットだった。だから彼には憎まれているだろうと、そう思っていたのに。

「私のこと、見ていたの?」

 ジャネットはボロボロと涙をこぼした。許してもらえるなんて、思っていなかった。だからいっそ、すべてをめちゃくちゃにして死にたかったのに。
 顔を押さえて泣いていると、ふわりと誰かに包まれた。

「フィオナ様?」
「大切な人を亡くす気持ち、わかるわ」

 彼女の手は優しかった。ジャネットは不思議な気持ちだった。フィオナに恨まれるのならわかるが、こんな風に慰められることがあるなんて。

「あなたがしたことは、香りを使った洗脳だわ。許されることではない」

 フィオナがすべて気づいていると知って、ハッとする。

「だけど、話を聞きたいと思ってしまったの」
「え?」
「あなたがどうしてこんなことをしたのか。教えてほしい。私、あなたがそんなに悪い人だとは、どうしても思えない。なにか理由があるように思えるの」

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