8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 フィオナが、全国の特産品をうまく流通させるためにと進言したことで、オスニエルはずっとその実現のために動いてくれていた。ブライト王国から入国する際に使われる北西部から王都への道路はすでにできあがっている。通行料を取られるものの、これまで五日かかったものが三日で来られるとあって、需要は高いと聞いている。

「ええ。後は東南方面への整備が整えば、国内を横断する道路が完成するのでしたよね」
「そうだ。その最終調整と、工事の状況の確認も含め、東方領を管理しているロイヤルベリー公爵家にしばらく滞在することになった」
「そうなのですか」
「期間は一ヵ月だ」
「長いですね」

 フィオナは寂しさにため息をつく。もちろん、わがままを言うつもりはないが、これほど長い期間、夫と離れているのは正妃になってからは初めてかもしれない。

「そんな顔をするな。行きたくなくなるだろう」
「あら、私は別に」

 見透かされた感じがして、ぷいとそっぽを向けば、オスニエルがくつくつと笑う。

「俺は寂しいが? お前を抱けないのは辛いし、オリバーとアイラの声が聞けないのもつまらないな」

 あっさり素直になられると、意地を張っているのが馬鹿らしくも思えてくる。

「……それは、……私だって」

 もじもじとし始めたフィオナに満足そうに笑いかけると、オスニエルは彼女の唇を奪った。

「今日は早めに仕事を終えてくる。夜、ゆっくり話そう」
「……はい」
「オスニエル様、そろそろお時間です」

 ロジャーが控えめにノックをし、オスニエルは名残惜しそうにしながら、執務へ戻っていった。

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