8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「はい、できました」
「……ありがとう」
それが、ユーインとの出会いだ。オスニエルとは真逆のタイプの彼に、ジャネットはすぐ恋をした。
それでも、気位の高い公爵令嬢だ。自分から彼に会いたいとは言えない。
彼からの誘いを待つ日々を、ジャネットは半年ほど続けた。
『ブレストン伯爵家のユーインとよく話しているようだな。気に入ったか?』
『お父様』
ジャネットが頬を染めたのを見て、父親は苦笑する。
『家柄的には劣るが、ブレストン伯爵家は花卉栽培において、一番進んでいる。これから手を組むには悪くない家だ。お前さえよければ、話を進めるが』
『私が頷いたら、ユーイン様に無理強いをさせてしまうのでは?』
『ユーイン殿はお前のことが気に入っているようだぞ。同じようなことを言っていた。まだ傷心のお前に無理はさせたくないから、時間をかけると。だが私には、お前が今も傷心のようには見えないのだが』
気遣ってくれるような言葉が、うれしかった。こうなってみると、ジャネットはなぜ、オスニエルに固執していたのか不思議に思えてくる。彼からは一輪の花だって、ほんのわずかな気遣いだって受け取ったことはなかったのに。
ジャネットは彼に、恋などしていなかった。ただ、断られたことで自尊心が傷ついていただけのことだ。
「……私、ユーイン様とお会いしたいです」
こうして、今度はふたりで会う機会を何度も作った。結局、結婚したのは初めて出会った日から一年後で、ふたりはそこで初めてキスをした。
あの日のことは忘れない。いつもはこちらが照れてばかりなのに、あの日は彼が真っ赤になって、照れてそっぽを向いてしまったのだ。
口で言うほど、女性慣れしていないところがうれしかったし、愛されていると実感できたことがうれしかった。