8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
国王様のはかりごと

 さかのぼることひと月前、オズボーン王国、現国王アラスター・オズボーンは、幹線道路整備計画の報告を宰相から聞きながら、内心では苦虫を噛み潰していた。
 そもそも、この事業はフィオナが側妃時代にひそかに行っていた氷の輸入を後押しするために、オスニエルが始めたものだ。

 結婚をオスニエルに強要したのはアラスターだ。聖獣の加護のせいで侵略しきれないブライト王国を、事実上の属国にするための政策だった。
 それ自体は成功し、ブライト王国とはこちらがやや立場を上にした状態で友好関係が続いている。

 予想外だったのは、オスニエルがフィオナにのめり込んでしまったことだ。
 オズボーン王家は、ボーン帝国の血を継いできた尊い血統なのだ。かつて大陸の大半を領土とし、四百年続いて栄華を誇ったボーン帝国。アラスターは、その血の尊さを幼少期から教え込まれてきた。
 だから、多く側妃を持ち、子もたくさんいるが、帝国ゆかりの貴族令嬢だった正妃との子であるオスニエルを王太子として優遇してきたのだ。第二王子もボーン帝国貴族の血統ではあるが、血の正当さでいけば、オスニエルにはかなわない。

 オスニエルにもそんな教育を施してきたはずだ。だからまさか、彼が他国出身の姫を、正妃にするほど入れあげるとは思わなかったのである。
 揚げ句、フィオナ以外に妻は要らないとまで言い出した。
 やがて熱も冷めるだろうと、いったんは了承したが、ますますフィオナに夢中になるオスニエルを見ていると、さすがに心配になってくる。

「……というところですね。通行料を払ってでも、商人たちにはメリットがあるようで、道路整備の初期投資は、二年で回収できると思われます。これが、ロイヤルベリー領を通り、東方諸国への窓口となれば、ますます収益はあげられるでしょう」
「ほう。オスニエル様は結婚されてから、変わられましたなあ」
「貿易で、国益がここまで増えるとは……」

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