8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 オスニエルが優れた人物だと理解すればするほど、ユーインはジャネットの気持ちがまだ彼にあるのではないかと疑っていた。
 自分と結婚してくれたのは、たまたま失意のタイミングに言い寄る男だったからではないかと。

 結婚して数年たっても、戦地に赴いている時間が長いせいか、ジャネットはなかなか妊娠しなかった。
 それさえも、神が、自分をジャネットには見合わない男だと認定しているような気がして。

 ユーインは、戦果が欲しかった。オスニエルにも負けないと思えるだけの、たしかな証拠が。その気持ちが、ユーインに判断を誤らせたのだ。
 敵の大将を横から狙える位置だった。自軍の兵の中には、伏兵がいることに気づいていたものもいたようだったが、戦果を焦るユーインは突撃を指示した。

 ユーインは矢に打たれ、そのまま意識を失った。

 うなされる日々を過ごして数日、ユーインは幻影を見た。
 泣きながらジャネットが縋り付いているのだ。彼女はあまり外出をしない。まして、戦地になど来るはずがないのに。

「お願い、ユーイン様、死なないで」

 ジャネットの香りに包まれながら、ユーインは後悔していた。
 彼女が望んでいたのは、戦地で武勲を立てることではなかったのではないだろうか。
 もっと早くこの侵略戦争を終えるよう進言して、彼女のもとへ帰ることだったのではないか。
 こんな風に泣かせる結果になるくらいなら、処罰を受けてでも派兵を断るべきだったのだ。
< 130 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop