8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
未来への種
 目を開けると、そこにはオスニエルの姿があった。

「フィオナ!」

 初めて会った頃の、つんけんした態度からは想像もつかないほど、愛情深い瞳で、彼はフィオナを見てくれる。

「アイラと、オリバーは?」
「大丈夫だ。別室で休んでいる」
「……ジャネット様は?」

 オスニエルはくしゃりと顔をゆがめて、フィオナの手に自分の額を押し付けた。

「人の心配している場合か、お前が目覚めなくて、俺がどれだけ心配したと思っている」

 少しかすれた声。彼の心配がうれしい反面、愛する人を失ったジャネットの悲しみはいかほどかと思う。
 自分ばかりが、すべて手に入れてしまったことを申し訳なくも感じた。

「オスニエル様」
「なんだ?」
「私、もう戦争は嫌です。死ななくていい人を死なせたくない。お願い、約束してください。無益な殺生はしないと。平和な世を築くと」

 言っているうちに涙が浮かんできた。これはループ前の自分への思いでもある。あんな死に方はもうしたくない。みんなで幸せになるために生きていきたいのだ。
 オスニエルは黙り込み、フィオナの手をギュッと握った。苦しそうな表情だ。

「お前と出会い、アイラとオリバーが生まれてから、俺は家族がこんなにも大切なものだと知った。お前が悲しむのなら、戦争などしない」
「みんなにも家族がいるのです。戦地に行く人々にも、待つ人々にとっても、戦いはつらいだけです。国を強くするには、ほかに方法もあります。だから」
「わかった。わかっている。お前が俺を怒っているのは」

 突然のオスニエルの叫びに、フィオナは驚いた。

「どうしたの……」
「最初は俺のことが嫌いだっただろう。許された今も、俺はたまに不安になるのだ。お前が、いつ俺に愛想をつかしてしまうのかと」
「あなた……」

 フィオナは少しあきれてしまった。オスニエルのほうが、ずっと過去にこだわっているではないか。
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