8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 アイラとオリバーは、一晩ぐっすり眠ってすっかり元気になっていた。

「ドル」

 オリバーは相変わらずドルフに引っ付きまわっている。運動神経がいい彼は、侍女が追い付けない速さで走っていた。

『元気だなぁ、オリバーは』

 リーフェは、みんなの力を増幅したことによってすっかり疲れてしまったらしい。呑気に日向に寝そべって、アイラに背もたれにされていた。

『なあ、浄化の力は誰のものなんだ? あの時はもう、ホワイティの薬もなかっただろう?』

 ドルフの問いかけに、リーフェは小首をかしげた。
 きっと、ジャネットに、びっちりとこびりついていた香りの効果のことを言っているのだろう。過去に戻って以降、ジャネットから花の匂いは消えていた。そして、憑き物が落ちたかのように、雰囲気も変わった。抱えきれないほどの悲しみから転じた憎しみが消え、今は凪のような穏やかさがある。

『えぇ? 知らないけど、たぶん、アイラとオリバー、ふたりだと思うよ』
「ふたり? どちらかじゃなくて?」

 フィオナが聞くと、リーフェはパッと顔を輝かせる。

『そろっていると、なんだか特別な力を発するみたいなんだよ。不思議だよねー』

 あきらかに他人事だ。加護を与えた聖獣の言うことではない。

『お前は適当だな』
『力なんて、本人の特性もあるもん。なにが起こるかなんてわからなくない?』
「まあ、それもそうね」

 無邪気に笑う子供たちだが、この先、ふたりの力がどう暴走するかわからないのだ。

「どんな力があったって、私はこの子たちを守るだけだわ。母親ですもの」
『えへ。フィオナってママとちょっと似てるよね』

 フィオナがそういうと、リーフェはしっぽを振って喜んだ。

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