8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 宰相の報告に、貴族たちはオスニエルを持ち上げる発言を始める。それも、アラスターは気に入らない。
 実際、フィオナが各地方の特産品を、女性のお茶会で紹介することにより需要が高まり、オスニエルが道路を整備したことで、タイミングよく王都で販売することができ、懐が温まった領土も多い。
 国王としては、この成果を喜ぶべきなのだとは思う。理解しているからこそ彼は表だって苛立ちを表情には出していない。
 だが、この成果を、ブライト王国出身の姫が出したものだと思うと、理不尽な怒りが湧き上がるのだ。

「早く東南へも幹線道路を伸ばしていきたいですね。我が領土では、現在、香水の開発に力を入れております。ぜひこれを特産品として全土に売り込みたいと思っているのですよ」

 にこやかに応じるのは、ロイヤルベリー公爵だ。

「香水?」

 アラスターは公爵へと話しかける。
 オスニエルの四歳上となる彼は、人好きのする笑みを浮かべる。

「ええ。妹のジャネットが力を入れておりましてね」
「ジャネットか。……息災か?」

 ジャネット・ロイヤルベリーは、オスニエルの最初の縁談相手だ。アラスターとしては、正妃候補の大本命で、年齢のつり合いも取れていることから、オスニエルが十九歳のときに、結婚話が持ち上がった。
 しかし、結婚自体に興味を持たないオスニエルのせいで破談となり、失意のジャネットは、領土内のブレストン伯爵子息の元へと嫁入りした。ブレストン家は花の栽培を特産としており、香水を作る技術はそこで学んだのだそうだ。

「ええ。戦争で夫を亡くしてからは、事業に熱を入れておりましてね。最近、ようやく市場に出せるレベルのものができあがったのですよ」
「ロイヤルベリー家に戻っているのか?」
「子供がいませんでしたから。それに、ブレストン伯爵家よりは我が家の方が家格もいいですしね」
「そうか」

 だとすれば、ジャネットは寡婦とはいえ、今だ〝ロイヤルベリー公爵家のご令嬢〟だ。

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