8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
出発の朝。フィオナは寝不足の目をこすりながら、オスニエルを見送るために、子供たちと聖獣たちを連れて、城にきていた。
出立するのは、オスニエルとロジャー。それと事務作業を手伝う側近がもうひとりと、護衛が五名だ。
ロイヤルベリー公爵家はオズボーンの東側の大半を管理する領主で、領内には小領主である伯爵が数名いる。首都からは、馬車で行けば四日、騎馬でいけば三日というところだ。
オスニエルは馬で行くつもりなので、飛ばせば片道三日で行けるのだが、荷物があるため、結局は馬車に合わせたスピードでいくことになる。
「とーた」
「おとさま、行っちゃうの?」
子供たちはオスニエルに抱き着き、別れを惜しんでいる。オリバーは全く分かっていないようだが、アイラの方はなにかしら感じているらしく、涙目になっていた。
「母上の言うことをよく聞くのだぞ? 困らせては駄目だからな」
「アイラ、そんなことしないもん」
アイラは反論して頬をふくらませ、オリバーは素直に頷いた。
オスニエルの目尻が下がっているのを見て、フィオナは、微笑ましい気持ちになる。
「いってらっしゃいませ。どうかお気をつけて」
最後にフィオナが挨拶すると、オスニエルは彼女を軽く抱きしめ、耳打ちした。
「ドルフがいるから大丈夫だと思うが、フィオナも無理はするな。力仕事が必要なときはカイを呼べ。緊急で問題が起こったときは、ドルフを俺のところによこしてくれ」
『俺は郵便屋じゃない』
オスニエルの勝手な言い分に、ドルフがフィオナにだけ聞こえる声で文句をつけていた。
「そうね。どうしようもなくなったら、ドルフにお願いしてみます。でも私はあなたの妻です。ちゃんと留守を務めあげてみせますわ」
微笑みを返したフィオナに、オスニエルはまぶしそうに目を細める。
「……いざとなると行きたくなくなるものだな」
「あら、駄目よ。あなたはいずれ、この国をしょって立つ人よ。しっかり顔を売っていらしてくださいな」
「わかっている。……留守を頼むぞ」
フィオナの頬にキスをして、オスニエルは踵を返した。
「フィオナ様、オスニエル様のことはお任せください!」
笑顔を見せるのはロジャーだ。細かに気を配ってくれる彼がいれば、オスニエルのことは大丈夫だろう。
フィオナは寂しがる双子を励ましつつ、オスニエル一行を見送った。