8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「ローランド」

 やや非難を込めた視線を送れば、ローランドは苦笑して手を離す。

「……あの政略結婚の話が出るまでは、陛下と父の間ではあなたと私を結婚させようという話があったのです。ご存じでしたか?」

 フィオナは息をのむ。それ自体も初耳ではあったが、アイラの前で言われたことにも驚いた。子供だからと言って話が分からないわけではないのだ。ましてアイラはおしゃべりで、誰の前でなにを言うのかわからないというのに。

「いいえ。そんな話は一度も。……ローランド。それが事実だったとしても、いまさら蒸し返す話ではないわ。私は今、子供たちに囲まれてこれ以上なく幸せなのだから」

 はっきりと言い返せば、ローランドは寂しそうな、少し傷ついたような顔をする。

「そうですね。申し訳ありません。つい懐かしくなって。……その」

 ローランドの目が細められ、その瞳に影がかかる。アイラがそっと手を伸ばした。

「ろーらんど、さびしいの?」

 彼は、驚いたように息をのむ。そしてアイラの小さな手をそっと包むと、力なく微笑んだ。

「大丈夫です。ありがとうございます。小さな姫君」
「えへへ」
「戻ります。久しぶりにお会いできてうれしかったです。フィオナ様」

 アイラのおかげで、ぎくしゃくした空気がほぐれた気がする。ローランドは、落ち着いた表情に戻り、礼をして戻っていった。
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