8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 後宮に戻ってからは、アイラとオリバーは入浴だ。シンディとほかの侍女たちが風呂に連れていき、フィオナは一足先に寝室に入って息をつく。すると先に入っていたドルフが、床の上でチョコンと座っていた。

「キャン」
「ドルフ、ここにいたの」
『お前、ひとりか』

 言うなり、ドルフは聖獣の姿に戻った。フィオナがベッドに腰を掛けると、ドルフも登り、フィオナの膝に頭だけを乗せる。

『あの男、いまだにお前が好きなんだな』

 ぽつりとそんなことをつぶやいた。

「あの男って?」
『ローランドだよ。気を付けたほうがいいぞ』

 たしかに、先ほどの意味深な態度は気にはなる。が、すでにフィオナは二児の母だ。ましてエリオットの護衛のために来ているローランドが、この城内でおかしな行動に出るとは思えない。

「まさか。大丈夫よ」
『誰かに心酔しているやつは、なんでも自分の都合のいいように考えるものなんだよ。トラヴィスだってそうだったろ?』
「……まあ」

 幼い頃、ローランドと共にフィオナの遊び相手だったトラヴィスは、三年前のフィオナ殺害と誘拐に関わった罪で、現在も投獄中である。反省の態度が見られ、獄中での生活態度もいいことから、恩赦の話も出ていると聞いているが、いましばらくは牢の中だろう。

「でもあれは、トラヴィスがもともとマイペースで強引な性格だからよ。ローランドはもっと思慮深いし、今の主人であるエリオットの立場を悪くするようなことはしないわ」
『そうかな。お前への態度は、ほかのやつに対するものとは違うぞ。距離も近かった』
「それは、……トラヴィスの話をしていたから」

 トラヴィスの話は、あまり大きな声ではできない。それでもフィオナはトラヴィスの父親がこの現状をどう思っているかを聞きたくて、こっそりとローランドに尋ねた。
 耳打ちをしていたのだから、たしかに息がかかるほど近い距離ではあったが、子供たちに聞かせるような話ではないのだから仕方ないだろう。これを親密と言われても困る。
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