8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「……俺はなにもしていないぞ。フィオナが作っていたものが、商家出身の侍女の目に留まって、試し売りしたら売れたと聞いた気がするが」
「ぜひ、そのあたりのご支援を、フィオナ様よりいただきたいのです」

 ダレンは口元を引きつらせながら、続ける。

「道路が完成する前に、王都でどのくらい受け入れられるかも確かめてみたいのです。それで、できればジャネットをしばらく王都に滞在させたいと……」

 ぎこちない微笑みに、オスニエルは苦虫を噛みつぶしたような顔になる。

「王都に滞在させる気か? ジャネットを? それで俺の妻に接待しろと?」
「ええ。……できれば」
「ダレン、正気か?」

 オスニエルに睨まれて、ダレンは深い溜息を吐き出した。それだけで、オスニエルには状況が察せられた。

「父上の意向か?」
「……申し訳ありません。国王陛下より、ここでの滞在を終えたら、ジャネットを王都によこすよう言われております」
「父上の命であれば、お前もジャネットを出さないわけにはいかないということか」
「ジャネットの意志がなければ反対しましたが……」

 オスニエルは眉を寄せる。
 ジャネットにその気があるのならば、もっと厄介だ。
 彼女は王国貴族が王妃に求める資質を全て持つ女性だ。フィオナは実力で貴族たちに存在価値を認めさせているが、生粋の王国貴族が現れれば、そちらを立てるようになるのは国民性からみてもあきらかだ。
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