8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「陛下からは、殿下の帰りに必ず同行させるようにと言われております」
それは、できれば避けたい話だった。ひと月の滞在予定を二ヵ月に伸ばした揚げ句、女性を伴って帰れば、周りからなんと言われるか目に見えている。
なにより、オスニエルはフィオナに誤解されたくはない。嫌われたくないのだ。
今でこそ仲睦まじくしているが、本気で嫌われていた頃をオスニエルは忘れていない。フィオナは気の強い猫みたいに、なにかあれば本気でつっかかってくる。突っかかってくるならまだよくて、見限られたら顔さえ見せてくれない。またあの頃のようになるのはごめんだ。
「あいにくだが、俺は一刻も早く王都に帰りたいのだ。荷物の馬車より先に馬で帰るつもりだ。ジャネットは馬車だろう? 荷物もあるし」
「殿下も馬車に同乗してください。護衛の数からいっても、ふたりが一緒にいたほうが都合がいいはずです。陛下もそのおつもりですよ」
父を出されるとオスニエルも弱い。だが、オスニエルはどうしても早く帰りたかった。
「では、ジャネットの護衛としてロジャーを残そう。俺の片腕で、剣の腕は確かだ」
「それでは、殿下の護衛が足りなくなってしまいます」
オスニエルはだんだん苛々してきた。こんな話をしている間にも飛び出したくて仕方ないというのに。
「俺はいざとなれば自分で戦える。むしろ、俺を弱らせているのは、二ヵ月も妻子に会っていないという現実だ。一日も早く帰りたいのだ。分かるだろう、ダレン」
王子としてではなく、ひとりの友人としてオスニエルは話す。こうなるとダレンも無理強いはできない。
「……分かったよ。引き留めてすまなかった」
彼の答えが、友人としてのものだったので、オスニエルは少しばかりホッとした。
その後すぐ、オスニエルはロイヤルベリー公爵邸を飛び出した。ついて行くのは護衛兵が二名のみだ。ロジャーは、残る全てをうまくまとめてくるよう言いつけられて残される。
見送りに出たジャネットは、にこにこ微笑んでいるロジャーに軽く頭を下げた。
「……ごめんなさいね。ご迷惑をかけて」
「いいえ。美しいご令嬢の護衛ができるなんて光栄ですよ」
ロジャーの返事に、ジャネットは困ったように微笑んだ。
絶世の美女の艶めいた表情に、ロジャーの心臓もどきりと波立つ。ふわりと広がる百合の香りが、胸をざわつかせるような気がして、ロジャーはこっそりと自分の頬をつねった。
それは、できれば避けたい話だった。ひと月の滞在予定を二ヵ月に伸ばした揚げ句、女性を伴って帰れば、周りからなんと言われるか目に見えている。
なにより、オスニエルはフィオナに誤解されたくはない。嫌われたくないのだ。
今でこそ仲睦まじくしているが、本気で嫌われていた頃をオスニエルは忘れていない。フィオナは気の強い猫みたいに、なにかあれば本気でつっかかってくる。突っかかってくるならまだよくて、見限られたら顔さえ見せてくれない。またあの頃のようになるのはごめんだ。
「あいにくだが、俺は一刻も早く王都に帰りたいのだ。荷物の馬車より先に馬で帰るつもりだ。ジャネットは馬車だろう? 荷物もあるし」
「殿下も馬車に同乗してください。護衛の数からいっても、ふたりが一緒にいたほうが都合がいいはずです。陛下もそのおつもりですよ」
父を出されるとオスニエルも弱い。だが、オスニエルはどうしても早く帰りたかった。
「では、ジャネットの護衛としてロジャーを残そう。俺の片腕で、剣の腕は確かだ」
「それでは、殿下の護衛が足りなくなってしまいます」
オスニエルはだんだん苛々してきた。こんな話をしている間にも飛び出したくて仕方ないというのに。
「俺はいざとなれば自分で戦える。むしろ、俺を弱らせているのは、二ヵ月も妻子に会っていないという現実だ。一日も早く帰りたいのだ。分かるだろう、ダレン」
王子としてではなく、ひとりの友人としてオスニエルは話す。こうなるとダレンも無理強いはできない。
「……分かったよ。引き留めてすまなかった」
彼の答えが、友人としてのものだったので、オスニエルは少しばかりホッとした。
その後すぐ、オスニエルはロイヤルベリー公爵邸を飛び出した。ついて行くのは護衛兵が二名のみだ。ロジャーは、残る全てをうまくまとめてくるよう言いつけられて残される。
見送りに出たジャネットは、にこにこ微笑んでいるロジャーに軽く頭を下げた。
「……ごめんなさいね。ご迷惑をかけて」
「いいえ。美しいご令嬢の護衛ができるなんて光栄ですよ」
ロジャーの返事に、ジャネットは困ったように微笑んだ。
絶世の美女の艶めいた表情に、ロジャーの心臓もどきりと波立つ。ふわりと広がる百合の香りが、胸をざわつかせるような気がして、ロジャーはこっそりと自分の頬をつねった。