8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
* * *
オスニエルをここまで性急に帰りたいと駆り立てるものは、フィオナの手紙に書かれた内容だった。
(あの男が来ていると聞いて、のんびりしていられるか!)
先日受け取ったフィオナから手紙には、エリオットが編入試験を受けるため護衛をと共に王城に滞在しているという内容が書かれていた。
(あの護衛騎士……だよな。たぶん)
オスニエルはいまだに忘れていない。エリオットが結婚式に参列するために王城を訪れた際、一緒にやって来た護衛騎士のことを。
たしか名前はローランド。金髪に深い緑色の瞳を持つ優男だった。洗練された動きといい、騎士というよりは育ちのいい貴族の坊ちゃんという感じだったが、フィオナは笑顔を見せ、手の甲へのキスも許していた。
(幼馴染みとは言っていたが。あいつは油断ならない)
騎士はフィオナに向かって、忠誠を誓っていた。聞けば、かつてはフィオナの護衛騎士をやっていたという。
エリオットも信頼を寄せているようで、三人が作り出す空気に、オスニエルの入り込める余地はなかった。
あの時のムズムズした嫌な気分が、手紙を受け取った日からずっと消えないのだ。
同じく幼馴染みと言っていたトラヴィスよりも、警戒すべき相手だと、オスニエルは本能で思う。
トラヴィスは、フィオナの気持ちを無視して、強引に事を進めるタイプだ。フィオナはそこに嫌気を感じていたようだったし、実際、自分も同じような態度で、彼女を怒らせている。
(あの男は駄目だ。誠実で正統派な優しさは、どんな女心も動かすに決まっている)
考えれば考えるほど、自分がなぜフィオナに選んでもらえたのかわからなくなる。
単純に、結婚してしまった相手だから、愛そうと努力しているだけなのではないだろうか。
「オスニエル様、速度を落としましょう。いくら道がいいとはいえ、飛ばしすぎです」
「ついて来られないなら、後から来い!」
「そういうわけにはいきませんよー!」
護衛ふたりが悲鳴のような声を上げる。ロジャーならば文句を言いつつもついて来るのにと思うと歯がゆしい。
「ええい。お前らは城に戻ったら馬術の鍛錬をしろ!」
仕方なく、オスニエルは少し馬の歩を緩めた。
オスニエルをここまで性急に帰りたいと駆り立てるものは、フィオナの手紙に書かれた内容だった。
(あの男が来ていると聞いて、のんびりしていられるか!)
先日受け取ったフィオナから手紙には、エリオットが編入試験を受けるため護衛をと共に王城に滞在しているという内容が書かれていた。
(あの護衛騎士……だよな。たぶん)
オスニエルはいまだに忘れていない。エリオットが結婚式に参列するために王城を訪れた際、一緒にやって来た護衛騎士のことを。
たしか名前はローランド。金髪に深い緑色の瞳を持つ優男だった。洗練された動きといい、騎士というよりは育ちのいい貴族の坊ちゃんという感じだったが、フィオナは笑顔を見せ、手の甲へのキスも許していた。
(幼馴染みとは言っていたが。あいつは油断ならない)
騎士はフィオナに向かって、忠誠を誓っていた。聞けば、かつてはフィオナの護衛騎士をやっていたという。
エリオットも信頼を寄せているようで、三人が作り出す空気に、オスニエルの入り込める余地はなかった。
あの時のムズムズした嫌な気分が、手紙を受け取った日からずっと消えないのだ。
同じく幼馴染みと言っていたトラヴィスよりも、警戒すべき相手だと、オスニエルは本能で思う。
トラヴィスは、フィオナの気持ちを無視して、強引に事を進めるタイプだ。フィオナはそこに嫌気を感じていたようだったし、実際、自分も同じような態度で、彼女を怒らせている。
(あの男は駄目だ。誠実で正統派な優しさは、どんな女心も動かすに決まっている)
考えれば考えるほど、自分がなぜフィオナに選んでもらえたのかわからなくなる。
単純に、結婚してしまった相手だから、愛そうと努力しているだけなのではないだろうか。
「オスニエル様、速度を落としましょう。いくら道がいいとはいえ、飛ばしすぎです」
「ついて来られないなら、後から来い!」
「そういうわけにはいきませんよー!」
護衛ふたりが悲鳴のような声を上げる。ロジャーならば文句を言いつつもついて来るのにと思うと歯がゆしい。
「ええい。お前らは城に戻ったら馬術の鍛錬をしろ!」
仕方なく、オスニエルは少し馬の歩を緩めた。