8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
  *  *  *

(どうして父上はあんなに頭が固いのだ。いつまでも旧帝国に固執して……。オズボーン王国になってから何代が過ぎたと思っているのだ)

 怒りが収まらぬまま、オスニエルがつかつかと廊下を歩いていると、賑やかな笑い声が聞こえてきた。
 客人用に開放している一区画に、交流目的のサロン部屋がある。扉が完全に閉まっていなかったので、そこから音が洩れているのだ。

(今滞在している客人というと誰だ? ああ、そうだ。エリオット殿が……)

 思い出して覗いてみると、フィオナの声が聞こえてきた。

「ごめんなさいね、エリオット。まさかオリバーがこんなところまで来ていたなんて」
「ぼ、エリ、みつけた!」

 続く声はオリバーのものだ。

「エリオットのことが気に入ったのね。オリバー」

 オスニエルは息をのむ。離れたときはひと言くらいしか話さなかった息子が、意味の通じる言葉を話しているのだ。
 フィオナがオリバーを抱き上げるのを、エリオットとローランドが優しいまなざしで見守っている。
 オリバーはエリオットの方に手を伸ばし、キャッキャと笑っていた。

(……なんだ、これ)

 オスニエルに最初に去来したのは悔しさだ。たった二ヵ月。その間、自分が見られなかった子供たちの成長を、エリオットやローランドに先に見られてしまった悔しさ。
 そこから、理不尽な怒りが湧いてくる。

(父上との話が終わったからすぐに行くから、後宮で待っていろと言ったのに)

 なぜこんなところにフィオナがいるのか。おそらくオリバーが抜け出したから探しに来ただけなのだろうが、子供じみた嫉妬が湧き上がる。

「フィオナ!」

 その苛立ちを消せないまま、オスニエルはサロンに乗り込んだ。振り向いた彼女の表情は驚愕だ。

「まあ、オスニエル様! おかえりなさいませ」

 まるで初めてオスニエルの存在に気づいたような態度だ。それもオスニエルのいらだちに拍車をかける。
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