8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「義兄上、ご無沙汰しております」

 すぐにエリオットも挨拶をする。しかし、オスニエルはまだ気持ちがおさまらなかった。

「エリオット殿、元気そうでなによりです。今日はぜひ、晩餐をご一緒に。ゆっくり話しましょう。──フィオナ、オリバーを貸せ」
「え? あ、ちょっと」

 フィオナの腕から強引にオリバーを抱き寄せる。すると、オリバーはびっくりしたように泣き出した。

「うわっ、うわああああ」

 これにはオスニエルも驚く。二ヵ月前、オリバーはオスニエルの腕を嫌がらなかった。むしろ、楽しんでいたくらいだったのに。

「な、なぜ泣く」
「オスニエル様。久しぶりなのですから慣らしてからじゃないといけませんよ」

 フィオナが慌てて仲裁に入るが、オスニエルの気持ちはおさまらなかった。

「俺は父親だぞ?」
「まだ二歳にもならない子供です。二ヵ月も離れていたら、人見知りをするようになりますよ」
「馬鹿な……。ええい。いいから、お前も来い!」

 泣きじゃくるオリバーを抱えたまま、強引にフィオナを連れ出すオスニエルを、ローランドは渋い顔をして見ていた。


「いたっ。痛いですってば」
「うわああああん」

 フィオナの叫びと、オリバーの泣き声が廊下に響き渡る。
 それでも歩みを止めないオスニエルに、ついにフィオナは感情を爆発させた。

「もうっ、オリバーを返してくださいっ」

 腕から我が子を奪い取られて、呆然としているオスニエルの目の前で、フィオナはオリバーをあやしにかかる。

 オリバーは母親の腕に戻り、少し落ち着いたのか、しゃくり上げる程度になっていた。

「よしよし、怖くないわよ。オリバー」
「……怖い、だと?」

 だがその言葉は、オスニエルの苛立ちに火を注いでしまった。
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