8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
  *  *  *

「あ、いたぁ。かーたま」
「アイラ」

 後宮のフィオナの部屋では、シンディとともにアイラが待ちかまえていた。抱いていたオリバーは泣き疲れたのかうとうととしている。

「おとさま、かえってきた?」
「ええ。でも、ちょっとお疲れみたい。またあとで会いに来てくださるわ」
「そっかー」

 アイラは眉を寄せ、ぷうと頬を膨らませる。

(かわいい)

 オリバーもアイラも、オスニエルを忘れたわけじゃない。当初の帰城予定であったひと月前からずっと、『いつ帰ってくるかな』と話し、こんな風に待っていたのだ。
 この姿を見せたいと思う反面、苛立っている彼の姿を見せたくないとも思う。
 苛立ちを感じ取ればアイラだって泣くだろう。そうなれば、オスニエルはどれほど傷つくだろうと思うのだ。

「アイラ、お父様に会ったらなんて言うのだっけ?」
「うーんとね。会いたかった!って」
「そうね。練習していてね」

 オリバーをベッドに下ろすと、ドルフがチョコンと乗ってきた。

『なにかあったのか?』

 ドルフの紫の瞳に見つめられると、どっと体が重く感じる。無意識だったが緊張していたのだろう。

「……うん」

 ずっとオスニエルに会いたかった。なのに、最初に見る顔があんなに不機嫌そうだなんて。
 気を抜いたら涙が出そうだった。オリバーに布団をかけ、フィオナは誰にも見られないようにそっと目尻を拭う。

「会いたかったのは、私だけだったのかも」

 言葉にすると、余計に悲しい。そのままなにも言えなくなって黙ってしまったら、ドルフは不愉快そうに眉を寄せた。

『……あいつはまた、なにをやっているんだ?』

< 48 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop