8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「おとたま!」

 フィオナの腕の中のアイラが、今度は父親の腕を求めて暴れ出す。こうなるとフィオナでは支えきれない。

「危ないわ、アイラ。暴れないで」
「アイラ、母様が困っているぞ」

 オスニエルは空いているほうの腕にアイラを受け取ると、軽々と双子を両腕に抱えた。

「ふたりとも元気そうでなによりだ」

 オスニエルにそう言われて、双子は顔を見合わせ、ようやく笑った。
 なんだかんだと、双子は同様に扱われるのが好きなのだ。フィオナの力ではひとりずつでしか抱き上げられないので、こういう時はオスニエルが頼もしく感じられる。
 オスニエルは案外子煩悩で、アイラとオリバーを怒ることはめったにない。笑顔を見せてくれることも多くなり、フィオナは子供が生まれてからのほうが、彼にときめくことが増えたように思う。

「お子様たちはいつも元気ですねー」

 ロジャーがのんびりした声で微笑む。
 オスニエルの部屋を作ってから、この後宮には人の出入りが多くなっている。基本的な執務は城にある執務室で行うのだが、緊急の要件などが発生することも多く、どうしてもロジャーやほかの政務官、伝令や見張りなどが出入りするのだ。
 それならば、とフィオナも護衛騎士であるカイを中まで入れることにした。
『後宮』という呼び名ももはやふさわしくないのだろうが、便宜上そのままの名称を使っていた。

「昼間からどうなさったのです? お仕事は終わったのですか?」

 フィオナが問いかけると、オスニエルは少しだけ顔を曇らせた。

「話があるから来たのだ。中に入ろう。支度をしてくれ」

 言われて、ポリーとシンディはすぐに部屋を整えるために中へと戻った。
 
 一家が集う居間は、中庭がよく見えるよう床までの大きな窓がある。そのため、窓が出入り口となっているのだ。
 入り口に靴の汚れを落とすためにマットが置かれていて、軽く足をこすってから入れば、室内が汚れることもない。
 抱っこから下ろされたオリバーはすぐに中に突進していき、アイラは、オスニエルの足元に引っ付いたままだ。
< 5 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop