8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「エリオット様は、どう思われます?」
「なにを?」
「オスニエル様のことです。先ほど、フィオナ様の話もちゃんと聞かず連れて行ってしまいましたが……」

 エリオットは、小さく微笑むと、ローランドの肩をポンとたたく。

「ローランドには、いつまでも姉上が頼りなく見えるのかもしれないけど、大丈夫だと思うよ? それに、オスニエル様も、見かけよりずっと、姉上のことは好きだと思う」

 ローランドの予想とは逆に、エリオットはオスニエルを擁護した。今日に確信めいた態度がローランドには理解できない。

「どうしてそんな風に断言できるのですか。そもそも、フィオナ様は政略結婚で嫁がれたのですよ? 世継ぎまで生んで、きちんとその役割を果たしているというのに、あの態度はないのではと思うのですが」

 突っ込まれるとエリオットも困ってしまう。
 どうしてと言われれば、今のフィオナには最高聖獣ともいえるドルフの加護があるし、オスニエルはブライト王国に乗り込んできてエリオットに頭を下げるくらいには、フィオナを心配していたからなのだが、それは彼らとの約束で内緒にすることになっている。
 エリオットは、しばらく考え、思いついた。真面目なローランドに納得してもらえるよう、情感を込めて話す。

「アイラとオリバーを見ていれば分かるよ。ふたりとも素直に伸び伸びと育っているじゃないか。大事にされている証拠だよ」
「それはフィオナ様がお子様方を大切にしているからです」
「オスニエル様も、きっと大事に思っているよ」

 だが、先ほどオリバーは泣いていた。そう言い募ろうとしたが、エリオットがそれ以上の反論を望んでいないことを感じ取り、黙って唇を噛みしめた。
 今のローランドの主はエリオットだ。主が望まないことは彼にはできない。

(だが……。本当にフィオナ様は幸せなのか?)

 約三年前、フィオナの結婚式の前に、ローランドは誓った。他国の王太子妃になっても、変わらず彼女を守ると。ローランドにとっては、フィオナは妹のような存在であり、大切な初恋の女性でもある。もう彼女への思いが叶わないのは分かっているが、もしフィオナが悲しみに心を病んでいるのならば、救ってあげたい思ってしまうのは仕方ないだろう。
 思いつめた表情のローランドに、エリオットが笑いかける。

「ローランド」
「はい」
「夫婦にしかわからないこともあるんじゃない? 僕は少なくとも、姉上はオスニエル様のことを愛しているんだと思っているよ」

 自分より年下の主に愛を語られて、ローランドはなにも言えなくなってしまった。

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