8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
  *  *  *

 夕食前に、オスニエルはフィオナを迎えに後宮を訪れた。
 あれから入浴もし、心を落ち着かせた。いきなり怒鳴ったことはやりすぎだったと反省もしている。いつもならうまく止めてくれるロジャーがいないのが予想外に裏目にでた。

「ポリー、フィオナと子供たちの準備はできているか?」
「オスニエル様。少しお待ちください」

 ポリーが中に呼びに行くのと入れ違いで、子犬姿のドルフが出てくる。
 そして、キンと空気が変わったかと思うと、ドルフは聖獣の姿に変わった。慌てて周りを見回すが、どうやら時を止めたようで、誰も動いていない。

「どうした、ドルフ。なにか言いたいことでもあるのか?」
『ある。お前はもう少し大人になれ。これ以上フィオナを泣かすようなら、子供ごと俺が連れて行くからな』
「は? 泣くってなんだ。フィオナ、泣いていたのか? 怒っていたのではないのか」

 沈黙が走る。ドルフは大きくため息をついた。

『フィオナはなんでお前がいいんだろうな』

 あきらかに馬鹿にしたような声にムッとするも、それは自分でも思っていたので、反論はできない。

「……留守中、困ったことはなかったのか?」
『そういうのはフィオナに聞いてやれ』

 そういうと、ドルフは時を動かし、子犬の姿に戻る。

「キャン」

 中へ入れとでも言うように、先に歩いていくドルフの後を追った。すると、アイラがとことこと駆け出してくる。

「おとさま! おかえりなさい」

 無邪気な笑顔に、心が高揚する。自然に顔もほころんで優しい声が出た。

「ただいま、アイラ」

 手を広げれば、飛びついてくる娘を、力いっぱい抱きしめる。

「かーたまも、オリバーも、会いたかったって」
「本当か? それにしてもずいぶんおしゃべりが上手になったんだな」
「だってアイラ、がんばってるもん」

 えへん、と胸を張る。そんなアイラがかわいらしく、強く抱きしめると、フィオナからもするようなミルクの匂いがした。
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