8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「かーたまも、オリバーも、だよ」
「……そうだな」

 アイラのように分かりやすく言葉にしてくれる存在がいるのはありがたい。

「ほら」

 オリバーがフィオナの服の裾に隠れて、のぞき込んでくる。

「オリバー、さっきは怖がらせて悪かったな」
「とー、たま?」
「ああ。父様だよ」

 おずおずと近づいてくるオリバーをもう片腕で抱き上げる。
 アイラと同じ目線になって、ようやくオリバーは顔を緩ませ、笑った。

「さ、エリオット殿が待っているから行こうか」

 双子を下ろし、ポリーとシンディに連れて行かせる。そしてオスニエルはフィオナに手を差し出した。

「行こう」
「……はい」

 フィオナはまだ浮かない顔をしていた。子供ほど簡単に機嫌は直らないだろう。オスニエルも少し緊張してくる。
 しかし、フィオナに対してはとにかく、自分の気持ちを正直に話すしかない。脅してもなだめても聞くタイプではないのだ、

「さっきは、……悪かった。お前が後宮から出てきているのが珍しいから、つい」

 耳打ちすると、フィオナは腕を掴んでいる手の力を少し込める。

「弟に会いに来ているだけです」
「別に疑っているわけじゃない」
「そうでしょうか」

 そのまま、フィオナはぷいとそっぽを向いてしまった。
 せっかく急いで帰ってきたのに、ついてないことこの上ない。


 夕食の時間も、気まずいままだ。
 エリオットの合格の話を聞き、寮生活の準備に着いてアドバイスしたり、最近の周辺国の状況を聞いたりしたりなど、あたりさわりのない話を続ける。
 ほっぺに芋のペーストを付けたアイラが、ふいとローランドを振り返った。

「ローラン、どうしてたべないの?」
「アイラ様。私は護衛ですので、後ほどいただきます」
「いっしょにたべようよう」
「アイラ、無理を言っては駄目よ」

 アイラが妙にローランドに懐いていることに、オスニエルはややムッとする。たしかに王子然としたところはあるが、しょせん護衛騎士だ。こっちは本物の王子だと言うのに。
 どうしてもローランドには不快感を持ちつつそれをここで口に出しても仕方ない。
 ぎこちない笑みを張り付けたまま、食事を終えた。

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