8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 そして夜。オスニエルはフィオナの寝室を訪れる。

「子供たちは頼むぞ」

 ポリーとシンディにふたりを任せて、オスニエルはまだ仏頂面のフィオナを寝室へと連れてきた。ベッドにはドルフが乗っていて、オスニエルは思い切り眉を寄せる。

「ドルフ、お前もどこかに……」
『お前がフィオナを傷つけないと確信した時点で、出て行ってやる』

 そう言い、ベッドをふたりに譲り、窓辺に腰を落ち着けた。どうにも信用されていないことに腹は立ったが、最初に大人げない態度を取ったのはオスニエルの方なので、甘んじて受けることにする。

「あのな……」
「まずはおかえりなさいませ」

 フィオナが冷たい声で言いきる。怒っているとき、フィオナは礼儀を崩さない。こちらが言い返せないような事実を淡々と述べ、静かに怒るのだ。
 これが、オスニエルには結構辛い。彼女の言っていることが正しいだけに、ぐうの音も出ないのだ。
 だが、ここでひるむわけにはいかない。

「昼間はいらだっていて声を荒げたのは認める。だが、俺だって必死の思いで帰ってきたのだ。なのに、お前もオリバーもあの護衛騎士と楽しんでいたのかと思ったら腹が立ったんだ」
「私が会いに行っていたのは弟です」
「分かっている。だが、実際、エリオット殿の隣にはいつもあいつがいるだろう」
「護衛騎士なんですから、あたり前でしょう!」

 フィオナの声が苛立っている。オスニエルは前のめりになって弁明した。

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