8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「遅いって……思っていました。早く会って、話したいことがたくさんあったのに……」

 声が震えて、恥ずかしくなったのかうつむく。その膝に涙が落ちていくのが見える。

「あ、アイラは前よりしっかり歩くようになったし、オリバーもお話が上手になったの。あなたに見せたいって、何度も思っていて……。なのに、帰れなくなったって……」

 仕事が延びたのは、べつにオスニエルのせいではない。しかし、そこを責められることに今は腹が立たなかった。フィオナも分かっているのだ。だから我慢して言わないようにして、膨れて。

「ああ。悪かった。俺も見たかったよ」

 そう言って体を抱き寄せれば、もうフィオナは抵抗せず、体を寄りかからせる。
 カタン、と音がしたと思ったら、ドルフの姿が見えなくなっていた。
 どうやら、聖獣の信用は得られたらしい。

「……私も、冷たい言い方をしてごめんなさい」

 ひとしきり言ってスッキリしたのか、フィオナは最後に謝罪を述べた。オスニエルは胸に湧きあがる衝動を抑えることができない。

(ああ、俺の妻はいじらしく、なんてかわいいんだ)

「会えなかった時間を埋めたい。いいか?」
「……はい」

 了承を得て、キスをする。フィオナの体にもすぐに火が付いたのが、返されるキスで分かった。
 久しぶりの行為で、オスニエルは旅の疲れもあったが、フィオナが「もう、無理」と半泣きになるくらいまで、彼女を抱きつぶしたのだった。

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