8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2

 香水という商品の性質上、顧客となるのは貴族だ。そして貴族間で物を流行らせようと思った場合は、高貴な人に気に入ってもらい宣伝してもらうのが最も効果的なやり方だ。
 この国で、最も高貴な女性は、オスニエルの母親だ。次が並み居る側妃たちだが、彼女たちは出身によっては王太子の正妃であるフィオナに劣る場合もある。
 つまり、ジャネットとしては、オスニエルの母か、フィオナにうまく売り込めればいい。……それ以外には、自分が高位の立場になるのも有効な手段だ。たとえば、オスニエルの側妃になれば、今よりもずっと彼女の発言には影響力が出てくる。

 ジャネットがそこまで考えているのかどうかはわからないが、フィオナもただ手をこまねいて見ている気はない。

「オスニエル様。私、そろそろ社交に戻ろうと思っています」
「フィオナがか? しかし体調は?」
「もうアイラもオリバーももうじき二歳です。ある程度は侍女に任せることも可能ですし。貴族女性をお招きしてお茶会をするくらいは大丈夫です。様々な噂話を集めることは、いい刺激をいただけますし、孤児院のためにもそろそろ新しいアイデアが欲しいところですから」
「しかし」
「国王様にも、引きこもりの王太子妃では強気に出られませんでしょう?」

 オスニエルはハッと理解する。フィオナは自分の弱みをつぶそうとしているのだ。いくらオスニエルが断固として側妃はいらないと言い張っても、最終的な決定権は父王にある。
 フィオナが正妃として求められるであろうことをするのは、自分の弱みを見せないため、ひいては、オスニエルのために戦ってくれるという意思表示でもある。

「俺は助かるが、無理はするなよ。アイラもオリバーもお前じゃないということを聞かないときもあるのだし」
「ええ、もちろん。子供たちを最優先にしますとも」

 話し終えて、フィオナは少しほっとしていた。決意表明と言ったらなんだが、オスニエルを譲るつもりはないことがはっきり告げられたことで、精神的にはずいぶん楽になったのだ。
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