8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
* * *
いよいよ、歓迎会の日がやってくる。
フィオナはその日、オスニエルのエスコートを受け、国王夫妻よりも下の壇で控えめに立っていた。部屋の奥のほうには、エリオットとローランドの姿もある。せっかく滞在中なのだからと、ふたりにも参加してもらったのだ。ローランドには今日は護衛騎士ではなく、ブライト王国の貴族として参加してほしいと、帯剣は控えてもらっている。
「ジャネット嬢はしばらく王都に滞在するそうだ。すでに交流をしている者もいると思うが、仲よくしてやってくれ」
国王の紹介されたあと、ジャネットは堂々と前に立ち、挨拶をした。
「皆さま、お久しぶりの方もおられるでしょうか。ジャネット・ロイヤルベリーです。よろしくお願いいたします」
艶のある黒の髪は、直系の血を多く引く者に現れるといわれている。王家直系はもとより、公爵家筋には時折現れる髪色だ。
オスニエルに似たその髪色を持つジャネットは、やはり人目を惹く。加えて、すでに円熟した色気を持つジャネットは、女性としてもとても魅力的だ。参加者の視線を集めるのは仕方のないことだろう。
フィオナ自身も、自分と全くかかわりのない人なら、素直に彼女に憧れたはずだ。
(それにしても……)
フィオナが気になっているのは香りだ。ジャネットが今回持ち込んだ香水。彼女がつけているのは当然だと思うのだが、なぜか香りが会場全体に広がっているのだ。
(多くの貴族女性がつけている? そのくらい、上流貴族を味方につけているということ?)
鼻が効かなくなりそうなほど、会場全体に広がっている。気品のある香りなのだが、フィオナはあまり好きではない。この香りを嗅ぐとなぜだか胸騒ぎがするのだ。
今夜の夜会は飲食での歓談が主だ。ジャネットは、王妃とフィオナに挨拶をした後は、群がる貴族女性たちの輪の中に入っている。
(あのあたりの令嬢が、みんな同じ香水をつけているのね。もうっ、どうして……)
珍しく苛々する。気持ちがはやって、少し攻撃的な気分だ。
(駄目ね。落ち着かないと)
フィオナはハンカチで口元をおさえ、なるべく香りを吸い込まないように努めた。小さな舌打ちが聞こえたので隣を見上げると、オスニエルも、心なしか不機嫌そうに眉を寄せている。
いよいよ、歓迎会の日がやってくる。
フィオナはその日、オスニエルのエスコートを受け、国王夫妻よりも下の壇で控えめに立っていた。部屋の奥のほうには、エリオットとローランドの姿もある。せっかく滞在中なのだからと、ふたりにも参加してもらったのだ。ローランドには今日は護衛騎士ではなく、ブライト王国の貴族として参加してほしいと、帯剣は控えてもらっている。
「ジャネット嬢はしばらく王都に滞在するそうだ。すでに交流をしている者もいると思うが、仲よくしてやってくれ」
国王の紹介されたあと、ジャネットは堂々と前に立ち、挨拶をした。
「皆さま、お久しぶりの方もおられるでしょうか。ジャネット・ロイヤルベリーです。よろしくお願いいたします」
艶のある黒の髪は、直系の血を多く引く者に現れるといわれている。王家直系はもとより、公爵家筋には時折現れる髪色だ。
オスニエルに似たその髪色を持つジャネットは、やはり人目を惹く。加えて、すでに円熟した色気を持つジャネットは、女性としてもとても魅力的だ。参加者の視線を集めるのは仕方のないことだろう。
フィオナ自身も、自分と全くかかわりのない人なら、素直に彼女に憧れたはずだ。
(それにしても……)
フィオナが気になっているのは香りだ。ジャネットが今回持ち込んだ香水。彼女がつけているのは当然だと思うのだが、なぜか香りが会場全体に広がっているのだ。
(多くの貴族女性がつけている? そのくらい、上流貴族を味方につけているということ?)
鼻が効かなくなりそうなほど、会場全体に広がっている。気品のある香りなのだが、フィオナはあまり好きではない。この香りを嗅ぐとなぜだか胸騒ぎがするのだ。
今夜の夜会は飲食での歓談が主だ。ジャネットは、王妃とフィオナに挨拶をした後は、群がる貴族女性たちの輪の中に入っている。
(あのあたりの令嬢が、みんな同じ香水をつけているのね。もうっ、どうして……)
珍しく苛々する。気持ちがはやって、少し攻撃的な気分だ。
(駄目ね。落ち着かないと)
フィオナはハンカチで口元をおさえ、なるべく香りを吸い込まないように努めた。小さな舌打ちが聞こえたので隣を見上げると、オスニエルも、心なしか不機嫌そうに眉を寄せている。