8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
「いいえ。そう言いながら、フィオナ様は全く弱くは見えませんわ。周囲に優しくできるのに弱くはないなんて人、いるものなのですね」
褒められているような気もする。敵意がむき出しじゃない分、フィオナも気が緩んでしまう。彼女がなにを考えているのか、探らなければならないのに。
「それは、買いかぶりすぎですわ。ジャネット様こそ、気品があり、お美しく聡明な理想の女性ではありませんか。香水も、ずいぶん人気のようですわ。いろいろな女性たちから香水の香りがしますもの」
「そう……ですね」
ジャネットは、庭園に咲く花を大事そうに触った。
「……きれいだと、言ってくれたのですわ」
「え?」
「死んだ夫です。オスニエル様との縁談が破談となり、落ち込んでいた私に、自分が育てたという花をいつもくださいました。『でも、花よりも君のほうがきれいだ』と言ってくれて」
ロイヤルベリー領は花の産地だという。その中でも、ジャネットが嫁いだ伯爵家は、香水作りを産業とするくらいだから、とくに力を入れていたのだろう。
「私は、彼の手助けをしたくて、お花から精油を取り、香水として売り出すことを提案したのです。配合は難しかったですけれど、研究しているのは楽しかった。彼はたびたび戦地に向かったため、退屈だったというのもありますわね」
「ジャネット様」
ジャネットは吹っ切ったように笑うと、「これを」とフィオナに差し出した。手のひらに残されたのは、香水の瓶だ。
「フィオナ様にもぜひ使っていただきたいのです」
「……ありがとうございます」
フィオナは小瓶をギュッと握る。ジャネットは微笑むと、そのまま歩いて行ってしまった。
ローランドに抱かれたままのアイラが、フィオナに手を伸ばしてくる。そしてぽつりと言った。
「あのひとが、しんぱい、だって」
「え?」
アイラがなにを見ているのか不思議で、フィオナはエリオットからオリバーを抱き寄せる。
褒められているような気もする。敵意がむき出しじゃない分、フィオナも気が緩んでしまう。彼女がなにを考えているのか、探らなければならないのに。
「それは、買いかぶりすぎですわ。ジャネット様こそ、気品があり、お美しく聡明な理想の女性ではありませんか。香水も、ずいぶん人気のようですわ。いろいろな女性たちから香水の香りがしますもの」
「そう……ですね」
ジャネットは、庭園に咲く花を大事そうに触った。
「……きれいだと、言ってくれたのですわ」
「え?」
「死んだ夫です。オスニエル様との縁談が破談となり、落ち込んでいた私に、自分が育てたという花をいつもくださいました。『でも、花よりも君のほうがきれいだ』と言ってくれて」
ロイヤルベリー領は花の産地だという。その中でも、ジャネットが嫁いだ伯爵家は、香水作りを産業とするくらいだから、とくに力を入れていたのだろう。
「私は、彼の手助けをしたくて、お花から精油を取り、香水として売り出すことを提案したのです。配合は難しかったですけれど、研究しているのは楽しかった。彼はたびたび戦地に向かったため、退屈だったというのもありますわね」
「ジャネット様」
ジャネットは吹っ切ったように笑うと、「これを」とフィオナに差し出した。手のひらに残されたのは、香水の瓶だ。
「フィオナ様にもぜひ使っていただきたいのです」
「……ありがとうございます」
フィオナは小瓶をギュッと握る。ジャネットは微笑むと、そのまま歩いて行ってしまった。
ローランドに抱かれたままのアイラが、フィオナに手を伸ばしてくる。そしてぽつりと言った。
「あのひとが、しんぱい、だって」
「え?」
アイラがなにを見ているのか不思議で、フィオナはエリオットからオリバーを抱き寄せる。