マスカレードknight
駅前広場には大きなツリーも。囲むように、自撮りやらスマホを向ける若い人、若くない人。

「ここで待ってろ」

おもむろに高野がアスファルトの地べたを指差してから、理由も言わずに人波に紛れ見えなくなった。ニコチンが切れたかー?坊主のくせして酒も煙草も慎むって言葉、ガン無視。笑えるー。

しょうがないからダウンのポケットからスマホを取り出した。今時はこれさえ持っとけば、どーにでもなる。財布も持ち歩かなくなったもんねぇ。

ネットニュースだの適当に弄り始めると、ふと耳障りな雑音が飛び込んできて顔を上げた。音源はどこかと視線を巡らせばちょっと離れた場所で、清楚な感じのコートに身を包んだお嬢ちゃんが二人連れの(やから)に絡まれてるっぽい。

「待ち合わせ?そーなんだぁ、オレ達もそーなんだけどさぁ。寒いし、来るまでその辺で一緒にあったまんない~?」

「あ・・・いえ、お気遣いなく」

困り顔で丁寧に断っても、かえって付け上がるのがオトコなんだけどね。あたしは盛大に溜め息を漏らした。
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