王子の盲愛
王弥達が通う学園には、学生がつけた差別的な言葉がある。
幼稚園から大学まである、学園。

幼稚園や小学校から入ったの学生は“白”
高校や大学からの学生は、皮肉を込めて“灰色”

そして、王弥は特別で“純白”と呼ばれている。

しかしこれは“白”のごく一部の学生が言っている言葉で、王弥は全く気にしてない。


手を繋いで、大学に入る二人。
かなり、注目を浴びている。

「え?え?なんで!?」
「王子が、手を繋いでる…」
「てか、あの子…灰色じゃん!」
学生達が、口々に噂をしている。

理世は予想はしていたが、やはり風当たりは強い。

(大丈夫…大丈夫…)
理世は必死に言い聞かせる。

高校生の時も、毎日のように気にかけられていた理世。やっかみや風当たりは強かったのだ。

「━━━世ちゃん!理世!!?」
「……っ…へ!?は、はい!!」
「聞いてる?僕の話」
「え?あ、ご、ごめん…ボーッとしてた……」
「お昼ごはん!
今日は2時限で終わりだから、どこかで食べて帰ろう?」
「あ、うん。でも、学食は?」
「うーん。学食は嫌いなんだ」
「そうなの?
美味しいよ?カレーとか」

「そうゆうことじゃなくて!」
「…??」


「王子ー!」
「王子!おはよー!」
「八神くん、おはよ!」
講義室に入ると、あっという間に囲まれた王弥。

理世は、ふと思った。
(もしかして、学食はこうやって囲まれるからなのかな?前期もこうやって囲まれたなぁ…)と。

学生達に圧倒され、理世はもみくちゃになる。
小柄な理世。
誰かに押し出された。

王弥と繋いでいた手も離れた━━━━

「あ…手…離れた……」
王弥の雰囲気が黒く染まる。

「王子ー!久しぶりー!」
「八神くん、横に座っていい?」
「レポート、一緒にしない?」
お構い無しに、次々と話しかける学生達。

「ねぇ!!」
王弥の通る声が、講義室に響いた。

「え?何?」
「見てわからない?」
「え?」
「わかんないの?
君達、バカなの?」
「え……」

「わかんないなら、それでもいいけどさ!
とにかく!退いて!離れて!話しかけないで!
あと、横に座らないで!レポートも、一緒にしない!
あと重要なこと、もう一つ言っておくね………!
次、僕から理世を離したら、容赦しないから!
君達、大学生なんだからわかるよね?
僕の言っている意味!」

一気にまくし立て、王弥は理世の方へ歩み寄る。

「理世ちゃん、手!」
「え?あ、う、うん」
差し出された手を握る、理世。

「怖かったよね……急に僕と手が離れて……
もう大丈夫だからね!絶対、離さないからね!」
その手を強く握った。
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