王子の盲愛

【純白】

トイレ近くのベンチに座り待っている、理世。

「あれ?北城(・・)さん?」
「え?あ…国松(くにまつ)さん?」

同級生の国松が声をかけてきた。

国松はいわゆる“白”の学生で、高校の時もいつも王弥にくっついていた学生だ。

理世は、国松が苦手だ。

国松は汚ない人間で、いつも取り巻きの学生を使い、自分の気に入らない人間に嫌がらせを行っていた。
高校の頃、理世もよく嫌がらせを受けていた。

「何やってるの?」
「王弥くんを、待ってるよ」
「………どうやって、取り入ったの?」
「取り入ったりなんかしてないよ」

「絶対なんかあるわよ!
貴女……“灰色”でしょ?
立場わかってんの!?
王子と同じ大学に通うってだけでもあり得ないのに、恋人はおろか結婚なんて……!」

「━━━━━━!!!?」
理世はただただ、驚愕して見ていた。

国松はいつも取り巻きにさせて、国松自身は後ろから静観して見ていただけだから。
今まで国松自身に何か言われたり、何かされたことがない。

「私が!八神家のお嫁に行くはずだったのに!」

「え………」

「忘れないで……!
王弥は“純白”で貴女は“灰色”だってこと……
貴女がいると、綺麗な王子が穢れるってこと………」
国松は、理世の耳元に顔を寄せて黒く低い声で囁いた。

「………」

「貴女の色は、学園のみんなを汚すのよ」



「お待たせ、理世ちゃん!」
「うん…遅かったね……」
理世は王弥の服を小さく握った。

「理世ちゃん?
ごめんね!トイレ出てすぐ、父さんから電話があって……」
「そっか」
「理世ちゃん、行こ?
本屋、行きたいんだよね?」
服を握っている理世の小さな手を掴み、王弥は指を絡めた。

「もう、帰りたいな」
「そう?わかった!帰ろう」

「━━━━━━理世ちゃん、今月末なんだけど…」
理世の歩幅に合わせ、ゆっくり歩きながら声をかける王弥。
「うん」
「父さんに会ってほしいんだ」
「え?」
「ごめんね、突然で……」
「……緊張するけど、わかった!
まだちゃんと、お義父様に挨拶してないもんね!」
「理世ちゃんのご両親も、来てもらうことできるかな?」
「わかった!帰ったら、すぐ連絡するね!
私達、バタバタ結婚したからね(笑)」

マンションに帰りつき、理世の両親に挨拶の連絡をして二人はソファで寛いでいた。
「あ、王弥くん」
「ん?」
「勉強、教えてくれない?」
「もちろん!」

理世がパタパタと、鞄から教科書とノートを取りに行きテーブルに広げた。
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