王子の盲愛
「私、八神くんのことまだ知らないし……」
「うん、これから知って?」
「だから、結婚なんて……お付き合いもしてないし……」

「うーん、じゃあ…結婚を前提に付き合って?」

「それなら……あ、いや、でも、まずは、お友達から……」
「それは、嫌!」
「え?ど、どうして?」

「友達だったら、必要以上に触れ合えない!
そんなの、耐えられない!
しかもその“友達から”なんて、断る常套句みたいな言葉いらない!
yesかnoか、はっきりして!
結婚は我慢してあげるから、友達なんて中途半端な関係は受け入れない!」
先程まで、まるですがるように理世に言っていた王弥。
途端に、視線が鋭くなり言い切った。

これだ!これなのだ!
八神 王弥という人は、こんな風にいつも鋭く相手を見て言い切る。

ただ、真っ直ぐに━━━━━━━


「じゃあ……お断りします」

(てゆうか、私…少し浮かれてた……
私みたいな、地味女が八神くんみたいな王子と付き合うことさえ、おかしいのよ……)

王弥は、その容姿と財閥御曹司というとこから“王子”と言われている。

対して理世は、地味でごく普通の家庭で育った。
ほとんどの学生が、幼稚園や小学校から通っているのだが、理世は高校からこの学園に通っている。

普通なら、あり得ない関係。

理世が恐縮するのも、無理はない。


「はぁぁ!!?なんで!!?
どうして……?僕のどこが嫌?
お願い!考え直して?嫌なとこ、全部直すから!」
また途端に、狼狽えだす王弥。

「え?え?八神くん!?」

「ねぇ!どこ?僕のどこが嫌?」
「そんな、嫌なんて……」
「じゃあ、なんで!断るの?」
「それは……」
「何?」
「私と八神くんじゃ、つり合わないから……
容姿も、身分も、何もかも…」

「は?何、それ?」
「だから━━━━━」
「つり合わないと、結婚しちゃダメなの?
そんなの、誰が決めたの?」
「そうじゃないけど……」
「僕は、本気なんだよ?
つり合わなくても、差があっても、理世ちゃんを絶対に手に入れたい!
理世ちゃんじゃないと、僕は幸せになれない!
僕に、不幸になれって言うの?」
今度は、責め立ててくる。

「え……そんなつもりは…私はただ…!」
「わかった!もう、いい!
せっかく、理世ちゃんの気持ちを大事にしようと思ったけど、やめた!
僕は、僕の好きなようにさせてもらう!」
王弥が何かを決心したように言って、踵を返した。

「え……あの、八神くん…?」
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