王子の盲愛
「え━━━━!!!!?」
ピタッと立ち止まる、理世。

「どうした!?北城?」

理世は、身体中…沸騰しそうなくらいに熱くなっていた。
“怒り”より、もっと邪悪な……殺意にも似た憤怒の感情。

理世は、真っ直ぐ新道の元へ向かった。

「ちょっ…北城!?」
成海も慌てて、理世を追う。

「新道さん」
「は?誰?」
「八神……あ、北城だよ」
「あー、何?」

「なんで、そんな嘘をつくの!?」

「はぁぁ!?何ー?まさか、嫉妬!?
あんた、みっともないよー」
「だって、私が!!!」
「は?」

「王弥くんは、私の旦那さんだから!!!」

「プッ…!!ハハハッ!!!」
「何ー!そのみっともない、冗談!!!」
周りの元クラスメート達が、爆笑している。

しかし、新道は少なからず驚いていた。
だって理世は、新道が嘘をついていることを知っているのだから。

「里麻も、言ってやりなよぉー」
「え!?あ、な、なんなのー!ばっかじゃないのー!」
新道は、今さら嘘なんて言えるわけがない。
みんなの話に、口裏を合わせたのだった。

悔しい━━━━
理世は、口唇を噛み締めていた。

「北城」
「え?先生…?」
「ここに、呼んだらどう?」
「え?」
「だって、来てるんだろ?
そうすれば、北城と新道がどっちが嘘を言ってるかわかる」

「え……ちょっと、待っ━━━━」
「なんだ?新道、問題あるのか?」
成海が、新道を睨みつけた。

「……い、いえ…」

理世は、王弥に連絡する。

『理世ちゃん?終わった?
思ったより早かったね!嬉しい~』
理世は、思わず涙が出ていた。

悔しくて、悲しくて……でも王弥の声に、安心したから。

『理世ちゃん?どうしたの?泣いてるの?
大丈夫だから、言って?』
「王弥くん、助けて……」
『え……理世…?』
「助けて!王弥くん!」

するとわずか数十秒で、王弥が体育館に現れた。

クラスメート達は、騒然としている。
「え……八神 王弥?」
「マジかよ!?」
「………っことは、北城さんの言ってることが本当だったってこと!?」


「理世ちゃん!!?」
「王弥くん!」
あっという間に、抱き締められる理世。

「理世ちゃん、どうしたの?」
「……っ…ひっ…く…」
もう…涙が溢れ、言葉が上手く出てこない。
理世は、ただ王弥にしがみついていた。

「理世?
━━━━━━誰!!?僕の理世を泣かせた輩は!!?」

会場のクラスメート達を見渡して、言い放つ王弥。
綺麗に声が通った。

成海が、事情を説明する。

「何、それ…!僕、こんな女知らないんだけど?
てか、理世以外となんて…考えただけで、吐き気がする。勝手に、僕の奥さん語らないでよ!?
キモい!!!」
王弥は、新道を汚い物でも見るように眉間にシワを寄せて言った。

「てか、嘘かよ……」
「こんな嘘、言う人だったんだ……」
「よく、こんな嘘言えたよね……」
「キモッ……!!」
手の平を返したように、クラスメート達が口々に言う。

「新道、北城と八神さんに謝れ」
「え……」
「どう考えても、新道が嘘をついてたってことだろ?
それに、ここにいるみんなもだ。
お前等、新道のこと言えないぞ!
お前等だって、北城を侮辱しただろ?謝れ!」

「はい…北城さん、ごめ━━━━━━」

「謝る必要ない」
クラスメート達が謝ろうとするが、王弥の遮る声が響いた。
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