王子の盲愛
「は?でも、北城を傷つけたんだぞ!こいつ等は」

「謝罪って言葉の意味、知ってる?」
「は?」

「自分の否を認め、相手に許しを乞うこと。
ここにいるみんなが、否を認めてるようには見えない。それに、僕は許すつもりない。
だって僕の理世を、泣かせるなんてあり得ないから!!
━━━━━だから、謝罪の必要がない」

理世を抱き締めたまま王弥は、冷静に言い放った。

「そうか…わかった」
成海も、静かに言った。

「じゃあ、僕達帰ります。
…………理世ちゃん、落ち着いたかな?」
腕を緩め、顔を覗き込んだ。

「……っ…ん…」
「あ…目…真っ赤だ……」
ゆっくり、目元をなぞる王弥。

「僕でもこんな風に、理世ちゃんを泣かせたことないのに……許せない!
やっぱ、行かせるんじゃなかった…!
ごめんね、理世ちゃん。もう…不安にさせたくなかったのに、こんな残酷な場所に来させちゃった……!」
そして、目元に何度もキスをする。

「王弥く…くすぐった、い……もう…大丈夫だから、帰ろ?」
「フフ…可愛い……帰ったら、いっぱいラブラブしようね~!」
王弥は更に、理世にキスで責める。

「フフ…王弥く…やめ…/////」
「可愛い~僕の可愛い理世ちゃん!」

「もう(笑)…………あ、先生」
「ん?」
「また、後日、王弥くんを紹介します」
「わかった。
…………はい、私の連絡先だ。いつでも、連絡ちょうだい」
「はい、ありがとうございます!」
理世は小さく頭を下げ、王弥に手を引かれて体育館を出たのだった。

体育館の扉を出る寸前。
王弥が、振り返る。

「あ!君達、僕が誰だかわかってるよね?
てか、特に……貴様!!」

「え……!?」
王弥に指を差される、新道。

「テレビ、見た?」
「え?あ、はい…!」
「そうなんだぁ~」
「え…/////」
王弥がフワッと微笑み、新道は思わず顔を赤くする。

「てことは~わかるよね?」
「え………」
王弥の雰囲気が、重たく圧迫されていく。

「僕、挑発されたら倍にして返す質だから!」

「え…あ…あの……」

そして、意味深に妖しく微笑み去っていったのだった。

バン!!と、扉が閉まる。
体育館内の空気は、凍ったように冷たくなっていた。


「新道」
「え?は、はい」
「謝りに行った方がよくないか?」
「え……?」

「八神一族は、ヤバいぞ!!
私も、噂でしか聞いたことないが……」
成海の言葉に、新道は身体を震わせる。

「お前が“本気で”謝罪するってなら、私が北城に会ってもらえるように話す。
その時は、連絡してこい」
続けて成海は新道に言ったのだった。
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